Java EE 8 の新機能概要のご紹介

2014年12月19日 at 10:00 午前 1件のコメント

この記事は、「Java EE Advent Calendar 2014」の19日目の記事となります。
昨日は、@nagaseyasuhitoさんの「JPAでマスター/スレーブ構成のMySQLを使うぞ」でした。明日は、@kokuzawa さんのご担当となります。

本エントリでは、今年の JavaOne で発表された、Java EE 8 (JSR-366) の今後の動向についてまとめたいと思います。

本エントリの内容は、JJUG CCC 2014 Fall で発表した内容に追加情報を加えた内容になっています。SlideShare で資料をご覧頂きたい方、もしくは PDF ファイルを入手されたい方は上記スライドをご参照ください。

本エントリの記載内容は、2014年12月時点での内容ですので、下記に記載する内容は今後大幅に変更する可能性もあることをどうぞご理解の上でご覧下さい。


まず、Java EE 8 のリリースに伴い、Java EE のスペックリードは本当に必要とされる技術が何なのかを改めて考えてみました。その際、業界のトレンドを観察し必要な技術は何なのかを検討したり、また Java の技術者の皆様にアンケートをとり、実際に技術者の皆様から求められている機能はどのような内容なのかも確認しました。アンケートの結果、JSON Binding, Security, JCache, Action ベース MVC 等が上位に占められていました。

こうして検討を重ねた結果、次の Java EE 8 のテーマを決めました。Java EE 8 では3つのテーマを元に機能提供を検討しています。

● HTML5
 + JSON Binding : JSR-367
 + JSON-P : JSR-374
 + Server-Sent Events : JSR は未定(JAX-RS,Servlet, WebSocket の何れか)
 + Action Base MVC : JSR-371
 + HTTP/2 のサポート(Servlet 4.0) : JSR-369
 + WebSocket の改善

● かんたん開発
 + CDI の適用範囲の拡大 : JSR-365
 + セキュリティ・インターセプタ
 + 仕様の削減

● クラウド環境への対応
 + Java EE Management 2.0 : JSR-373
 + Java™ EE Security API 1.0 : JSR-375

最新の Web 系の技術トレンドに対応するために、HTTP/2 への対応を Servlet 4.0 内で行うほか、Server-Sent Events の標準化、新しい Action ベースの MVC 等の導入も検討しています。また Java EE 5 以降、6,7 と継続してかんたん開発のテーマに取り組んでいますが、これは Java EE 8 でも継続します。例えば CDI の適用範囲をひろげ Java SE 環境でも CDI を利用できるようにします。さらにクラウド対応という点では、今まで Java EE アプリケーションを監視する際に使用していた、管理・監視用の JMX を改め、JAX-RS による監視を可能にする他、今までアプリケーション・サーバ毎に個別設定していた認証・認可の設定・実装(レルム)を標準化し、より簡単にユーザ管理のアプリケーションを実装できるようにします。これらの各種技術概要を見るだけでも Java EE 8 が待ち遠しくなりますが、それぞれの検討内容を下記にまとめて紹介します。

HTML 5 への対応として、ここに列挙する内容が検討されています。これらを順に説明します。

JSON Binding : JSR-367
JSON Binding は JSON と Java オブジェクトをマッピングし相互変換を簡単に実現するための機能です。

今までも、XML を利用する場合には、JAX-B を利用したり、データベースのテーブルと Java オブジェクトをマッピングするために、JPA を利用してきましたが、JSON-B はこれらと類似の方法で JSON と Java オブジェクトをマッピングできるようになります。またこれを実装する事によって JPA の Entity を使用したデータベース・テーブルから JSONへの相互変換や、JAXB を使用した XML と JSON への相互変換も容易になります。
JSON-B は JSON の Java へのマッピングにおいてできるだけ実装コードを少なくするため、Configuration by Exception のルールに乗っ取り標準でデフォルトのマッピング・ルールが提供されます。またクラスの継承も可能です。このデフォルトのルールに従う場合は、Java を簡単に JSON に変換できます。そしてもちろん、デフォルトのルールをカスタマイズしたい場合には、専用のアノテーションを付加する事でデフォルト・ルールを上書きする事もできます。
また、Java EE 7 で導入された JSON-Processing との連携も容易にできます。

JSON-B の参照実装は、Eclipse link MOXy で開発が進められています。


それでは、実際に Java と JSON のバインディングについて見ていきましょう。ここでは、Employee というクラスに、インスタンス変数、id, firstName, lastName, email が定義されており、Employee クラスのインスタンス (e) を生成した後、それぞれに値を代入しています。この Java オブジェクトを JSON で扱う場合、デフォルトのルールに従うとインスタンス変数名が、JSON の KEY になり、変数に代入された値が JSON の value として代入されます。

また、JAX-B をご利用した事のある方であれば、用語の説明は不要かと想定しますが、Java から JSON への変換を Marshal (マーシャル) といい、逆に JSON から Java への復元の事を Unmarshal (アンマーシャル) といいます。


Marshal (JavaからJSONへの変換), Unmarshal (JSONからJavaへの変換) を行うために、まず JsonContext オブジェクトのインスタンスを生成します。JsonContext のインスタンスを生成するためには、デフォルトで用意されているファクトリ・メソッド JsonContext#newInstance() を利用する事ができます。また下記のように JsonContextBuilder を通じてインスタンスを生成する事もできます。

JsonContext context = new JsonContextBuilder()
                  .setScope (MyClass.class, ...)
                  .excludeField(“field”, MyClass.class)
                  .addFilter(myContextFilterImplementation)
                  .build();

生成した JsonContext のインスタンスから、それぞれ createMarshaller() で Marshaller オブジェクトを、createUnmarshaller() で Unmarshaller のオブジェクトを生成します。


一旦、Marshaller オブジェクトを生成すると、変換したいオブジェクトを marshall() メソッドの引数に渡す事で簡単に JSON を含む String オブジェクトを取得したり、Writer として取り出す事もできます。


同様に、unmarshaller() メソッドの引数に JSON を含む String 、もしくは Reader から Java オブジェクトを渡す事で簡単に Java オブジェクトに復元する事もできます。


今まで JsonContext から Marshaller や Unmarshaller を生成し各処理を行う方法を紹介しましたが、よりかんたんに直接相互変換を行うためのユーティリティ・クラス Jsonb の作成も検討中です。Jsonb のメソッドを利用すると直接、marshal, unmarshal を実行する事もできるようになります。


JSON-B ではプリミティブ型や、参照型に対するデフォルトのマッピングルールを提供します。しかし、デフォルトのルールに従わず独自にカスタマイズしたい場合には、下記のようなアノテーションを付加しカスタマイズする事もできます。


例えば、デフォルトのルールに従うと、Java クラス中のインスタンス変数名は、JSON のキーに同一の名でマッピングされます。しかし、Java クラス中のインスタンス変数名と、キー名を変更したい場合は、@JsonPropertyアノテーションを付加して変更する事ができます。


また、Java のクラス中に含まれる特定のインスタンス変数を JSON にマッピングさせたくない場合、@JsonTransient アノテーションを付加し無効化する事ができます。


さらに、JSON ドキュメント中のキーの記載順に意味があるような場合、デフォルトでは Java クラスのインスタンス変数の記載順にマッピングされますが、その順番を変更するために、@JsonPropertyOrder アノテーションを付加し引数内に順番を指定する事ができます。


JSON-B では継承やポリモーフィズムにも対応予定で、また Marshal の前後、もしくは Unmarshal の前後に処理をインターセプトして何らかの処理を付け加えて実行したい場合に、それらを実現するための API (JsonPre***, JsonPost***) も用意しています。


JSON-Processing は Java EE 7 に JSR-353 として導入されました。JSON-P は Stream を利用して JSON の解析、生成を行うための低レベル API を提供し、XML における StAX や DOM のような機能を提供しています。
Java EE 8 では Java EE 7 で提供されている機能に加え、JSON の標準仕様に準拠した最新機能 (JSON ポインタや JSON パッチ) にも対応します。


まず、JSON ポインタについてご紹介します。


JSON ポインタは IETF RFC 6901 : JavaScript Object Notation (JSON) Pointer で定義される仕様で、JSON ドキュメント内に存在する特定の値を参照するための構文です。


たとえば、この例をご覧ください。この例では JSON 配列の中に、2つの JSON オブジェクト(名前が Duke と Jane)があります。そして人に関する情報(名前、性別、電話番号)が JSON オブジェクトとして記載されています。それではこの中から携帯電話の電話番号 (650-234-5678) を取得するにはどうすればよいでしょうか。JSON ポインタを利用すると、”/何番目/phones/mobile” といった形式で一意に値を取得する事ができるようになります。例では “0/phones/mobile” と 0 番目を指定する事で値を取得しています。


それでは、Java で JSON ポインタを扱うためにはどのようにすれば宜しいでしょうか。まず、先ほどの JSON ドキュメント(名前が Duke と Jane)が JsonArray のインスタンス contacts として表されている事とします。 この時、Json クラスのクラスメソッド createPointer() の引数に、参照したい JSON 値への参照パス(“/0/phones/mobile”)を渡し、JsonPointer のインスタンスを生成します。ポインタの getValue() を実行する事で JsonValue を取得する事ができます。またポインタに対して、replace を実行する事で、指定した参照の値を変更した結果の JsonArray を取得する事ができます(※ オリジナルを直接書き換えるわけではない)。


JsonPointer クラスには、ここで示すように様々なメソッドが用意されています。しかし、ここで1点注意をしなければならない事があります、add, replace, remove 等のメソッドは直接オリジナルの JSON ドキュメントに対する変更を行うわけではないという点です。JsonObject や JsonArray はイミュータブル(不変)のデータなので、直接それを変更するわけではなく、変更した後に新しい JsonArray や JsonObject を生成するという点に気を付けてください。オリジナルの JSON ドキュメントを編集したい場合は、JsonPointer ではなく、次に紹介する JsonPatch を利用します。


続いて、JSON パッチについて紹介します。
JSON パッチは、IETF RFC 6902 : JavaScript Object Notation (JSON) Patchで定義される仕様で、特定の JSON ドキュメントに対して行う操作(追加、変更、削除等)内容が記載された JSON のドキュメントのフォーマットです。JSON パッチのドキュメントは、op (add,replace,remove 等) と path (JSON ポインタ)が必須で、それ以外は必要に応じて追加できます。また、MIME タイプ “appliaction/json-patch+json” を指定し、HTTP の PATCH メソッドを利用できます。

※ JsonArray や JsonOBject はイミュータブル(不変)なオブジェクトなので、直接変更を加える事ができません。そこでオリジナルの JSON ドキュメントに対して、変更(追加、変更、削除など)を加えたい場合、新たに処理内容を記載した JSON ドキュメントを作成し、指定したドキュメントに対して操作を行う事ができるようになります。

下記に HTTP の PATCH メソッドの利用例をご紹介します。


PATCH /my/data HTTP/1.1
Host: example.org
Content-Length: 326
Content-Type: application/json-patch+json
If-Match: “abc123”

[
    { “op”: “test”, “path”: “/a/b/c”, “value”: “foo” },
    { “op”: “remove”, “path”: “/a/b/c” },
    { “op”: “add”, “path”: “/a/b/c”, “value”: [ “foo”, “bar” ] },
    { “op”: “replace”, “path”: “/a/b/c”, “value”: 42 },
    { “op”: “move”, “from”: “/a/b/c”, “path”: “/a/b/d” },
    { “op”: “copy”, “from”: “/a/b/d”, “path”: “/a/b/e” }
]


それでは、実際に JSON パッチのドキュメント記載方法と利用方法について説明します。まず、左側に示す、”mobile”:”650-234-5678″ の電話番号を (“650-111-2222”) に変更する場合を考えてみましょう。変更するために処理内容を記載した、JSON パッチのドキュメントを生成しますが、先ほど説明したように、op と path は必須です。ここでは既存の値を変更したいので、op には “replace” を指定します。また変更対象の値は、JSON ポインタで “/0/phones/mobile” と表す事ができますので、path にこの値を記載します。最後に value に変更後の値を指定する事で、電話番号を変更するための JSON パッチのドキュメントができあがりました。


また次に既存の JSON ドキュメントから要素を削除する例を確認してみましょう。この例では、0 番目を全部削除する場合を考えます。削除するために、JSON パッチのドキュメントを生成しますが、先ほどと同様 op と path は必須で、それぞれ remove と JSON ポインタで対象を指定します。


さて、基本的な JSON パッチの概念が理解できましたので、Java でどのようにしてパッチを扱うかについてご紹介します。オリジナルの JSON のドキュメントが JsonArray の target に代入されている事とします。また JSON パッチの記載内容が JsonArray の patch に代入されている事とします。Json クラスのクラス・メソッド createPatch(patch) を実行し、JsonPatch のオブジェクトを取得します。そして JsonPatch の apply メソッドをターゲットに対して実行します。このようにとても簡単にパッチを適用できます。


最後に、JSON クエリに対する Lambda & Stream API の適用についてご紹介します。JSON-P で提供される API の javax.json.JsonObject, javax.json.JsonArray はそれぞれ、java.util.Map, java.util.List インタフェースを実装したクラスです。そして、Map や List は Java SE 8 で導入された Lambda 式や Stream API を利用してバルク(一括)操作を行う事ができるようになります。具体的には、JSON ドキュメント中のデータのフィルタリングや変更(マッピング)などのバルク(一括)処理ができるようになります。下記に Java SE 8 の Lambda 式や Stream API を使用して JSON データに含まれるデータの抽出を行う例を紹介します。


Stream を取得するために、JsonObject, JsonArray で getValuesAs(JsonObject.class).stream() を実行します。一旦 Stream のインスタンスを取得した後は、java.util.stream.Stream で提供される filter や map といった中間操作用のメソッド、collect といった終端操作用のメソッドを、通常の Stream API と同様実行する事ができます。この例では、filter メソッド内で、性別が女性の方をフィルタリングし、 JsonObject として抽出しています、次に map メソッドで、抽出した JsonObject 中から、女性の名前を getString(“name”) で取得し、結果として String のストリームを返しています。最後に collect メソッド内で、結果を List として返しています。つまり List<String> femaleNames には女性の名前の一覧が代入されてます。

Lambda 式と Stream API を利用して JSON ドキュメントのデータの抽出等がかんたんにできる事が分かりました。しかし、Stream API の終端操作 Collectors で標準に提供する機能では、配列やリストなどへの変換しかできません。Stream API を利用して任意の中間操作を行った後、最終的に終端操作で直接、JsonObject や JsonArray のオブジェクトを取得できるとさらに有用です。そこで、Java EE 8 では java.util.stream.Collectors クラスを拡張した JsonCollectors を新たに提供する予定です。JsonCollectors では最終的に JsonObject や JsonArray を取得するためのメソッドを追加したり、groupingBy メソッドで結果のグルーピングをおこなうためのメソッドも提供する予定です。


具体的に JsonCollectors の利用例を紹介します。先ほどの例では collect で List を返していましたが、その代わりに collect で JsonCorrectors.toJsonArray() を指定する事で、結果 JsonArray オブジェクトとして結果を取得する事ができます。


最後に、今までご紹介してきた、JSON ポインタ、JSON パッチ、Lambda 式 & Stream API を使用して、オリジナルの JSON ドキュメントに対して一気に変更を加える例を紹介します。ここでは、電話番号のエリアコード(地域識別番号)で 415 を含むデータのみを抽出し、そのエリアコードを 415 から 650 に一括変更するための処理を記載します。まず、Stream を取得した後、filter メソッドで電話番号のエリアコードが 415 を含む JSONObject の Stream を取得します。次に、map メソッドで エリアコードの部分を 415 から 650 に変換するための JSON パッチを動的に生成し、生成した JsonObject の Stream を返します。最後に collect メソッドで、条件に一致する全ての変更用のパッチを含む JsonArray を生成し返します。パッチ用の JSON ドキュメント生成後、オリジナルの JSON ドキュメント(contacts) に対して、Json.createPatch(patch).apply(contacts) でパッチを適用する事で結果を取得しています。
このように、Lambda 式 & Stream API を利用する事で、より簡単にパッチの適用ができるようになります。

JSON-B に関する詳細は下記 JavaOne の発表資料「Java API for JSON Binding
Introduction and update
」もご参照ください。

ここでご紹介した API に関して、ご意見、ご要望がある場合は、メーリングリスト、JIRA などでお問い合わせください。
https://java.net/projects/jsonb-spec/
https://java.net/jira/browse/JSONB_SPEC/

続いて、Server-Sent Events (以降 SSE) について説明します。


歴史を少し振り返ると、サーバ側で発生するイベントをリアルタイムに通知するための仕組みは、今まで Ajax を使った Polling, Comet(Long Polling,Streaming), WebSocket が利用できました。Polling や Comet は、パフォーマンスが非常に悪く、大量のリクエストを捌くサービスを提供する事が困難でした。WebSocket はハイ・スケーラブルで双方向通信を実現できますが、専用のプロトコルを利用するため、これをサポートするクライアント、サーバ、さらに HTTP プロキシ等が必要でした。一方で SSE は純粋な HTTP を使用し、サーバ側からクライアントに対する一方向へのメッセージ通知としては利用できます。双方向通信ではなく、サーバからの一方向通信でよい場合、SSE は有用です。

SSE は、現在 W3C で仕様がドラフトとしてまとめられています。
http://www.w3.org/TR/eventsource/

SSE は、クライアントからサーバに接続しコネクションが確立した後は、サーバからクライアントに対して一方向でデータを送信します。この際、サーバ側で発生するイベントに応じて、何度も同一コネクションを利用してデータ転送する事ができます。MIME タイプとして専用のメディア・タイプ “text/event-stream” を利用します。SSE はクライアントがサーバに対してサブスクライブ(購読)要求をだして、サーバがサブスクライブしているクライアントに対してパブリッシュ(配信)するという点で JMS のパブリッシュ・サブスクライブのモデルに似ています。


現在、Java EE 上で SSE の実装を検討中ですが、どのレイヤーで実装するかを今まさに議論中です。具体的には Servlet 上、WebSocket 上、JAX-RS 上、もしくは独自のコンテナ上で実装する案があがっており、これらを検討中です。

検討案の説明資料:

クリックしてSSE-in-EE8.pdfにアクセス

上記をエキスパート・グループメンバーに問い合わせ中ですが、現在、スペックリードとしては JAX-RS が一番適切ではないかと考えています。なぜならば、JAX-RS で既に HTTP のリソースに対するストリーミングをサポートしており小さな変更ですむためです。

● 小さな変更で実現
  例えば、JAX-RS でサーバ、クライアントにそれぞれ下記の API を追加します
  サーバの API として : EventOutput に対し新しいメディアタイプを追加
  クライアントの API として:Server側のイベントに対する新しいハンドラを追加
● 他のHTTPの操作と組み合わせる際に便利:新しいメディアタイプ
● Jersey(JAX-RS RI)は既に SSE をサポート済み
Jersey を利用した実装例はコチラ

JavaOne で発表された、次の JAX-RS で組み込む機能紹介の概要は下記よりご参照ください。
Let’s Talk JAX-RS.next! JSR-370 – What to expect in JAX-RS in Java EE 8

また、JAX-RS の参照実装 Jersey で既に実現している SSE の実装方法については下記をご参照ください。
Chapter 14. Server-Sent Events (SSE) Support


オリジナルの資料では Java EE 7 から導入された Concurrency Utilities for EE を使って説明されていなかったため、Concurrency Utilities for EE を使って書き直したコードを下記に記載します。ここでは、ManagedExecutorService を @Resource アノテーションでインジェクトした後、別スレッドで SSE のイベント通知を行っています。別スレッドの処理内容の例は、StockThread に記載しています。実際に SSE でメッセージ通知は EventOutput#send()メソッドで行っています。

また、SSE ではクライアント用の API も用意しています。これにより、JavaFX 等のスタンドアローン・アプリケーションでも SSE クライアントを実装し、SSE のサーバ・サイドからの通知を受信して何らかの別処理を行う事ができます。


次に、Action ベースの新しい MVC フレームワークについて紹介します。
Java EE 7 まで Web アプリケーションの開発を行う際、JavaServer Faces(以降 JSF), もしくは JAX-RS を利用できました。この中で JSF はコンポーネント・ベースの MVC フレームワークとして Java EE 5 以降標準の Web 開発フレームワークとして導入されています。一方、アクション・ベースの MVC フレームワークも世の中には多く存在します。例えば Struts や SpringMVC 等がこれに当てはまります。

Java EE の開発者にアンケートを実施した所「アクション・ベースの MVC は改めて必要でしょうか?」という質問に対し、約 6 割の方々が ハイと答えました。またその際、アクション・ベースのMVC を実装するために、「参考にすべき技術(デファクト・スタンダードな技術)はありますか?」と質問した所、75% の開発者は分からない、もしくは存在しないと答えました。

当初、JAX-RS のエキスパート・グループ・メンバーを中心に新しいアクション・ベースの MVC について議論を行いましたが、様々な議論を行った結果、JAX-RS とは別途、検討・実装した方がよいという結論になり、グループを再編し、スタンドアローンのAPI として、新しく JSR 371: Model-View-Controller (MVC 1.0) Specification として仕様策定を進めています。

※ 現在まさに仕様を検討中ですので、下記に紹介する内容は今後大きく変更する可能性があります。その点をどうぞご注意ください。


まず、MVC の各構成にどのような技術を適用するかを紹介します。アンケートの結果、参考にすべきアクション・ベース MVC が無い、もしくは分からないというご意見が多数あったため、既存の資産を有効活用するため Java EE で現在提供されている機能を組み合わせて、それらをつなぎ合わせて実装できるような MVC フレームワークを検討中です。Movel には CDI, Bean Validation, JPA 等を View は Facelets, JSP, 任意のテンプレート・エンジン(プラグイン可能なテンプレートエンジンが入れられると望ましい)等が予定されています。

一方で、現時点でまだ Controller 部分の実装が決まっていません。スペックリードが現在(10/29 から)この新しい MVC フレームワークのコントローラ部分をどのような環境で提供すべきかアンケートも実施しています。
https://java.net/projects/mvc-spec/lists/users/archive/2014-10/message/68

(A) Layer MVC on top of the Servlet API: define new set of annotations, new URI mapping algorithm and new data binding layer for controllers. This option implies no MVC + REST controllers, at least not in a elegant manner (see example on e-mail thread).

(B) Layer MVC on top of the JAX-RS API: reuse existing set of JAX-RS annotations, URI mapping algorithm and data binding layer for controllers. This option implies that MVC + REST controllers will be possible, but also that our runtime will depend on the JAX-RS runtime.

メーリングリストでの回答の多くは、(A) の Servlet API 上に Controller 実装を希望している方が多く見られるようです。一方、Oracle (Santiago) としては (B) に投票予定のようです。

(3) Oracle’s Vote: We have been busy writing some prototypes and evaluating
MVC frameworks for the last few weeks. We are not taking this decision
lightly as it obviously has a great impact on future work. Our main concern
has always been familiarity of existing APIs and duplication of work,
especially around matching (routing) and binding. These are the list of
annotations that JAX-RS defines for this:

* Matching: ApplicationPath, Consumes, Produces, GET, PUT, POST, DELETE,
HEAD, OPTIONS, Path, HttpMethod

* Binding: BeanParam, CookieParam, DefaultValue, Encoded, FormParam,
HeaderParam, MatrixParam, PathParam, QueryParam, Cookie, Form

And this is just annotations, no matching and binding semantics, etc.
This fact, together with the existence of several MVC frameworks built on top
of JAX-RS, has led us to the conclusion that JAX-RS is right technology for
MVC to be layered on. Thus, Oracle votes for option (B).

下記に JavaOne 発表時のサンプル・コードを示しますが、上記の投票結果や今後の進捗によって今後大きく変更される可能性があります。






上記では、JSP や Facelets で <form action=”/rough-example/form1a.jsp”> を記載し、ページ内に EL 式を用いてデータ・バインディングができるようになっています。またサーバ側では、クライアントのリクエストに対応する処理を @Path を付加したメソッド内で記述し、メソッドの戻り値として画面遷移先を返しています。

Java EE におけるアクション・ベースの MVC フレームワークのプロジェクトはまだ始まったばかりです。ご興味のある方は是非、java.net に存在するプロジェクトやメーリング・リストにご参加ください。

JSR 371: Model-View-Controller (MVC 1.0) Specification
The MVC specification project : java.net


HTML 5 関連で最後に、HTTP/2 対応についてご紹介します。
HTTP/2 は Internet Engineering Task Force(IETF)の Hypertext Transfer Protocol Bis (HTTPbis)のワーキング・グループで標準化が進められている、次バージョンの HTTP プロトコルです(現在はまだドラフト)。HTTP/2 の特徴として下記のような物があげられます。

* レイテンシを軽減
* Head of Line Blocking 問題の対応
* 並列処理のサポート(複数コネクションは不要)
* HTTP 1.1 の意味は保持
* HTTP 1.x との連携を定義

Java EE で HTTP/2 に対応するために、JSR 369: Java™ Servlet 4.0 Specification で対応を行います。Servlet API は、HTTP/1.x に対応していたため、単一リクエストに対し単一レスポンスを返すアーキテクチャになってました。この問題点として、例えば、同一クライアントからサーバに対して大量の HTTP リクエストを行うような場合、特定のリクエストで処理時間を多く要した場合、後続の処理が待ち状態になり全体としてパフォーマンスが低下する場合がありました。しかし HTTP/2 ではよりデータ転送の効率化をはかるために、単一コネクションで、リクエストとレスポンスを多重化できるようになります。これにより、例え一つのリクエスト処理に時間を要しても後続の処理に影響が発生しにくくなるため、より効率的なデータ転送を行う事ができるようになります。

Servlet 4.0 における変更点の詳細は下記に記載していますので、下記をご覧ください。

また、JSF 2.3 における変更点は下記ごご覧ください。


続いて、「かんたん開発」の分野における Java EE 8 の拡張ポイントについて説明します。まず、CDI の適用範囲が大幅に広がります。

CDI は Java EE 6 で導入され、Java EE 7 まで、Java EE のコンテナ、つまりアプリケーション・サーバ上で利用されてきました。実際、CDI の仕様である JSR 299 は Contexts and Dependency Injection for the Java™ EE platform として記載されていました。しかし Java EE 8 からは、JSR 365 として Contexts and Dependency Injection for Java™ 2.0 に名前を変え、CDI の適用範囲を Java EE 外にもひろげ、Java SE 環境でも利用できるようにします。これにより、EJB の組み込み可能コンテナと同様に、JUnit のテストコード等でも CDI を利用できるようになります。

Java EE 8 に含まれる CDI 2.0 では、大きな機能拡張としてここにあげる3つの機能があります。

また、上記以外にも下記のような機能拡張も予定されています。

● イベント処理の拡張
● インターセプター・デコレータの仕様への対応
● SPI の拡張
● コンテキストの拡張
● Java 8 機能への対応(タイプ・アノテーション、アノテーションのくり返し、Lambda, Stream, デフォルト・メソッド、型推論)

詳しくはWorking method for CDI 2.0をご参照ください。


まず、Java SE 環境で利用可能にするために、CDI を Java SE 環境で起動するための Bootstrap 用 API が提供されます。

CDI 2.0 first Face to face meeting feedback によると、下記のようなクラスの提供を検討しているようです(まだ議論中との事)。上記会議での議論の内容は CDI 2.0 の新機能を理解する上で重要ですのでご興味のある方はどうぞご覧ください。

public class ContainerBoot {

    /**
     * Simple boot
     */
    static BeanManager initialize() {
      ...
    }

    /**
     * Boot with parameters
     */
    static BeanManager intialize(Map&lt;?,?&gt;) {
      ...
    }
    void shutdown() {}
}

つづいて、モジュール化について説明します。CDI は Java EE 6 における標準化以降、Java EE において非常に重要な機能になっています。そして、EJB 等で培ってきた経験を元に、EJB が持つ機能も多く CDI に取り込まれて利用できるようになってきており、この方向性は今後も引き続き継続されそうです。この中で CDI が機能を持てば持つ程、CDI 自身が大きく、重量になる事も懸念されてます。そこで、CDI 自身を引き続き継続して軽量に扱う事ができるように、CDI 自身のモジュール化を検討しています。

上記では①、②、③と示しましたが、実際にはより細かく検討されています。

A. 単純な DI の機能
B. Observer パターンを利用した CDI によるイベント管理機能
C. 対象型の発見方法の拡張
デプロイしたアプリケーションの起動時に型検査を行う
D. (A+B+C+AOP:インターセプタ、デコレータ)
E. D+コンテキスト管理

詳細は CDI 2.0 modularity proposal をご覧ください

また、EJB の MDB に変わり、CDI でも非同期メッセージを受信するための新しい API も検討中です。現在の MDB の実装は、たくさんの設定が必要で MessageListener を implements したクラスの実装も必要でした。
今回、JMS をさらに簡単に利用でき、任意の CDI に対して利用ができるようにします。また、MessageListener を implements したクラスの実装も不要で、直接メソッドに @JMSListener のアノテーションを付加し、監視する Queue を destinationLookup で指定し実装できるようになります。

また、Java EE 7 までの MDB と同等の振る舞いを実装するためには、該当の CDI に対して @Singleton アノテーションを付加する事で MDB と同等の振る舞いを実現できます、また @Transactional アノテーションを付加する事でコンテナ管理のトランザクションも正しく動作します。ここに記載したコード例のように既存の MDB の実装に比べより簡単に実装できるようになります。


Java EE 7 まで提供されてきた認可(Authorization)用のアノテーションとして、@RolesAllowed や @RunAs といったアノテーションが存在しました。これらのアノテーションは多くの利用場面に有用でした。しかしより複雑な認可処理が必要な場合、別途、認可用のプログラミングを実装するか、もしくは新しく CDI のインターセプタを実装する必要がありました。また認可用のアノテーションを実装する際に、EL 式が評価できるようになる事でより多くのユースケースにかんたんに対応できるようになります。

今回、ロールに基づく認可の他、Java EE のコンテキスト情報にもアクセスし、コンテキスト情報から認可情報(プリンシパル名、ロールチェック、認可チェック)を取得する事も可能な新しいアノテーションを、CDI のインターセプタとして実装する予定です。

詳細は、JIRA に登録されている JAVAEE_SPEC-29 : EL-Enabled Authorization Annotation をご覧ください。

また、上記以外にも、CDI との連携をより強化するために、様々な場所でクリーン・アップを行います。例えば、WebSocket の実装においても CDI のスコープを利用できるようにしていますが、このように CDI が他の仕様でも幅広く利用されている事がわかります。

WebSocket の拡張に関しては下記の Slide もご参照ください。


また、Java EE 8 では Pruning (剪定:仕様の削減) 候補として EJB 2.x のリモート、およびローカルのクライアント・ビュー(EJBObject, EJBLocalObject, EJBHome, EJBLocalHome インタフェース)があげられています。さらに CORBA : (Prune CORBA interoperability) もあげられています。理由として昨今 SOAP や REST で通信を行う事が多く CORBA の利用場面が大幅に減ってきているためです。現在これらを用いて実装している場合は、アップデートをご検討ください。


最後に、Java EE プラットフォームの近代化(クラウド環境への対応)を行うための機能を紹介します。


まず、Java EE Management & Deployment API について説明します。
JSR 77: J2EE™ Management という JSR において、Java EE のプラットフォームで提供される管理オブジェクトを定義していました。これらの管理オブジェクトの各インスタンスは、構造化された OBJECT_ID で識別され、管理オブジェクトは追加機能を提供するために、コンテナ側で下記インタフェースを実装する事もできました。そして、これらの管理オブジェクトは、JConsole 等のツールを利用して管理、監視を行ったり、独自に管理・監視機能実装してアプリケーション全体の運用管理を行う事ができました。

EventProvider : 設定イベントの通知 : GlassFish 実装
StatisticsProvider:統計情報採取 : GlassFish 実装
StateManageable:状態管理(基本的なライフサイクル) : GlassFish 実装

今回提案する仕様では、現在の実装方法に代わり、REST インタフェースで管理可能な、管理オブジェクトを定義する事を目的としています。これにより、既存の HTTP のツールやライブラリを用いてかんたんに Java EE アプリケーションの管理ができるようになります。またこれにあわせ、エキスパート・グループ・メンバーは、既存の Management EJB の API や JMX API をオプションにするべきかどうかも検討中です。これは仕様をかんたんにするためという理由だけではなく、今回提案する REST インタフェースをより積極的に採用していただくためです。

新しい REST インタフェースは、既存で提供している OBJECT_NAME を URL に変換し、また個々の管理オブジェクトに対する CRUD 操作も可能です。EventProvider のイベント通知に Server-Sent Events もサポートする予定で(WebSocket も検討中だが、対応ツール(HTTPのアップグレードは不要)リアルタイムで監視する事ができるようになります。

また、JSR 88: Java™ EE Application Deployment という JSR において、デプロイ・ツール用のインタフェースが定義されていました。そしてこれに準拠したデプロイ・ツールから、個々のアプリケーション・サーバに対して直接アプリケーションをインストールする事ができました。JSR 88 のサポートは Java EE 7 からオプション化されています。

デプロイ用の API も上記、REST インタフェース内に取り込む予定です。このインタフェースを利用する事で、アプリケーション・サーバのインスタンスに対して、REST インタフェースを通じて直接アプリケーションをインストールする事ができるようになります。その際、依存するリソース定義や管理も REST インタフェースを通じてできるようになります。


次にセキュリティについて説明します。現在、セキュリティの設定・実装に関する多くがアプリケーション・サーバ固有設定になっており、これにより移植性が大きく損なわれていました。今回、これらサーバ独自の設定を排除し標準化する事で、クラウド環境でより柔軟に移植性の高いアプリケーションの構築が可能になります。
これらは、JSR 375: Java™ EE Security API で検討中です。

まず、パスワード・エイリアスを導入します。これまで、アプリケーション・サーバからデータベースや、LDAP 等の外部リソースへの接続するためには、サーバ側の設定でユーザ名、パスワードを設定していました。所がこのユーザ名、パスワード管理はアプリケーション・サーバ固有で、一部のアプリケーション・サーバでは生のパスワードを記載しなければならない場合もありました。データベースや LDAP への接続用のユーザ名やパスワードを生の形で見えるようにしておくのは非常に危険です。そこで、生パスワードを記入しなくてもよい標準の方法を提供します。

@DataSourceDefinition{
  name=“java:app/MyDataSource”,
  className=“com.example.MyDataSource”,
  …
  user=“duke”,
  password=“${ALIAS=dukePassword}”)

上記の構文は、現在 Java EE の参照実装 GlassFish で採用されているパスワード・エイリアスの指定方法で、標準化にあたりこれをベースにしていますが、パスワードの値には、実パスワードを参照するためのエイリアス(仮の名前)が設定されており、実行環境が必要に応じてエイリアスから元の実パスワードを参照するようになっています。

ご参照:Password Aliasing for EE 7

続いてユーザ管理について説明します。Java EE 7 までユーザ管理(認証・認可)を扱うアプリケーションの実装は、各アプリケーション・サーバ・ベンダーに依存していました。つまり統一的なユーザ管理用の API も用意されていなかったため、概念は共有できても実装コードは個別に行う必要がありました。以前、GlassFish v4 で始める Java EE JDBC レルム ハンズオン・ラボ として GlassFish 上で Java EE6/7 利用者向けのハンズオン・ラボを公開しましたが、ここで記載した内容は他のコンテナではそのままでは利用できません。そこで、このようなユーザ管理を行うアプリケーションを作成する際の、標準化を行い移植性の高いアプリケーションを構築するため、ユーザ管理機能の標準化が行われます。
この仕様もまた、JSR 375: Java™ EE Security API 内で行われています。また、JIRA に登録されている JAVAEE_SPEC-9 : Simplify and standardize authentication & role mapping もご参照ください。



ユーザ管理を行うために、3つのコア・クラスを提供します。これらを順に紹介します。

● UserSourceDefinition:データ・ソース(DB, LDAP, ファイルなど)を定義
● UserService:ユーザの管理(追加、変更、削除など)機能を定義
● UserInfo:ユーザ情報の定義(ユーザ名、パスワード、有効期限など)

UserSource(DB, LDAP, ファイル、その他)のリソース中に含まれるユーザ、グループを UserService で処理し、個々のユーザは UserInfo として管理され、ユーザ名、パスワードだけでなく、有効期限や、アカウントのロック状態なども管理ができるようになります。

具体的に、LDAP からユーザ、パスワードを参照するアプリケーションを作成する例をここで紹介します。@LdapUserSourceDefinition というアノテーションを付加し、ユーザ情報が含まれる LDAP ディレクトリをしていします。またこれを利用する為には、@Resource アノテーションを付加し UserService をインジェクトしています。UserService のインスタンスを取得した後は、下記に示すメソッド(現時点での仮案)を利用してユーザ管理、グループ管理を行う事ができるようになります。


+ UserInfo:loadUserByUsername(username)
+ changePassword
+ createUser
+ deleteUser
+ updateUser
+ userExists
+ createGroup
+ addUserToGroup
+ removeUserFromGroup
+ isUserInGroup

また、UserInfo のインスタンスは下記のフィールドを持ち、ユーザ自身の管理も標準で用意にできるようになります。

+ Username
+ Password
+ AccountExpired
+ AccountLocked
+ PasswordExpired
+ Enabled
+ Attributes


続いて、ロール・マッピングについて説明します。ロール・マッピングもユーザ管理同様、アプリケーション・サーバ固有に設定・実装が必要でした。ロールマッピングの実装もまた標準化を行います。

ロール管理を行うために、2つのコア・クラスを提供します。これらを順に紹介します。

● RoleMapper:ロール情報が保存されるデータ・ソース(DB, LDAP, ファイルなど)を定義
● RoleService:ロールの管理(権限の付加、排除、権限の有無チェックなど)機能を定義


RoleMapper(DB, LDAP, ファイル、その他)のリソース中に含まれるロール情報を RoleService で処理します。

ここでは、メモリに存在するロール情報を元に、ロール管理を行うアプリケーションを作成例を紹介します。ここでは、@MemoryRoleMapperDefinition アノテーションを付加し、その中でロール情報を定義しています。ここで定義されたロール情報を元に @Resource アノテーションで RoleService をインジェクトしインスタンスを生成しています。getRolesメソッドの引数で与えられたユーザが持つ全てのロール一覧を取得するために、getRolesForUser(username) を実行しています。RoleService が提供するメソッドの一覧(現時点での仮案)は下記の通りです。


+ grantRoleToUser(username, role)
+ revokeRoleFromUser(username, role)
+ hasRoleForUser(username, role, includeGroups)
+ getRolesForUser(username, includeGroups)
+ getUsersWithRole(role, includeGroups)
+ grantRoleToGroup(group, role)
+ revokeRoleFromGroup(group, role)
+ hasRoleForGroup(group, role)
+ getRolesForGroup(group)
+ getGroupsWithRole(role)

このように、ユーザ管理用の API やロール管理用の API が標準化される事で、よりかんたんにユーザ管理アプリケーションが実装できるようになるだけでなく、移植性の高い認証・認可のアプリケーションを構築できるようになります。

Java EE 8 は 2016 年の秋頃を目処に仕様を FIX し提供する予定です。

また、これに向け Java EE 8 は JSR 366 として登録され投票の結果、満場一致で承認されました。

詳細なロードマップは上記ですが、Java EE 8 の正式リリース時には、今までと同様 GlassFish が参照実装として提供される予定です。

現時点で登録済みの Java EE 8 関連の JSR 一覧を下記に示します。下記 JSR もどうぞご参照ください。

● JSR 366: Java Platform, Enterprise Edition 8 (Java EE 8) Specification
● JSR 107: JCACHE – Java Temporary Caching API
● JSR 365: Contexts and Dependency Injection for Java™ 2.0
● JSR 367: Java™ API for JSON Binding (JSON-B)
● JSR 368: Java™ Message Service 2.1
● JSR 369: Java™ Servlet 4.0 Specification
● JSR 370: Java™ API for RESTful Web Services (JAX-RS 2.1) Specification
● JSR 371: Model-View-Controller (MVC 1.0) Specification
● JSR 372: JavaServer Faces (JSF 2.3) Specification
● JSR 373: Java™ EE Management API 2.0
● JSR 374: Java™ API for JSON Processing 1.1
● JSR 375: Java™ EE Security API

その他、メンテナンス・リリースとしてここに示す各既存 API の改善も検討されています。

Java EE 8 の今後にご興味のある方は Java EE プロジェクトにご参加頂き、メーリング・リスト等でフィードバックをください。


Adopt-A JSR プロジェクトを通じて、日本 Java ユーザ・グループの一員としてフィードバック等をおこなってください。

最後に、Java EE 7 が日本で本格的に導入されるのは 2015 年からですが、Java EE 7 のプロジェクトを開始するにあたり、その先の Java EE 8 の変更点等を理解し意識した上でプロジェクトを進めていく事は、将来の移行、更新において非常に有用です。例えば、Pruning 予定の EJB 2.x の機能を使っているかた、Java で CORBA の利用をご検討中の方は時代の流れをいち早くつかみ、そうしたコードを排除する事がより安全に長く使っていただくための秘訣です。また認証・認可の実装コードも将来標準化される予定のクラスやメソッド・シグネチャを理解しておく事で、移行も用意になるかと想定します。Java EE 8 が市場で投入されるようになるのは、2017 年後半〜2018年辺りになる事が予想されるので随分先の内容ですが、将来の動向もみながらどうぞ今のプロジェクトをお勧めください。2016 年にリリース予定の Java EE 8 をどうぞ楽しみにしてください。

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