JavaOne 2013 コミュニティー・キーノートのまとめ

2013年10月1日 at 6:37 PM

今年の Java コミュニティ・キーノートは、エンタープライズ環境で利用が多い現在の Java において、Java エコシステムは、エンタープライズの利用にとどまらず、幅広い分野で Java が利用されている事、利用できる事を学ぶ機会を開発者に与えました。

冒頭で、Senior Director, Product Management, Java Platform Groupの Donald Smith から過去の振り返りを行いました。2 年前の JavaOne では Moving forward Javaがテーマでした。その後、Java SE 7 が正式リリースし、我々は Java のエコシステムを再構築してきました。2012 年のテーマはイノベーションで、Java をコアな場所で採用する、例えば、クラウドや、BigData, IoT に対応させていく事でした。そこで鍵となるのがオープン・コミュニティでした。

今年は、過去の2回とは趣向を変え、さらにテーマを拡大させていきます。Java は過去ご紹介してきたような ISV(独立系ソフトウェア企業)の要望だけでなく、エンドユーザやアプリケーション開発者のニーズをかなえていきます。Java エコシステムにおいて、現在、様々な方が色々な分野で Java を適用しています。今年はそれら世界中の開発者が Java で実施している内容についてご紹介します。これによって、現在の Java エコスシステムを理解できます。

その前に、若干今年の JavaOne を振り返ります。ここでSenior Java Developer Community Manager (Twitter ID : @java) のTori Weldtが壇上に招かれました。Tori はOTN (Oracle Technology Network)を取りまとめていますが、OTN としてJavaOne に参加した事を誇りに思い、世界中にいらっしゃる、Java の開発者コミュニティを支援することを誇りに思っていますと語りました。また、Tori は今年の JavaOne で、テクニカル・セッション以外に実施されたイベントについていくつか紹介しました。

Toriはまず、始めにRaspberry Pi チャレンジについて紹介しました。これはRaspberry PI のハッキングを行うイベントで、参加した開発者はテクニカル・セッションの受講を欠席してまで参加された方々でしたが、参加した開発者は皆、参加した事に大変満足していたと報告しました。参加者はRaspberry PI について深い知識を持たなくても参加でき、エキスパートと共に協力してプロジェクトを作成していきました。期間中には7個のプロジェクトが完了しましたが、中にはとてもすばらしい物がいくつか作成されました。例えば、Google Glass のアプリケーションとして作成したアプリケーションは、Raspberry PI と心拍計と連動し、心拍計をつけた人の心拍数をリアルタイムでモニタリングし、Google Glass 上に表示するといった内容でした。


[Heart of Glass の動画]

また、モンスター・トラックの車に Raspberry PI を搭載したプロジェクトも、基調講演のまさに直前に完成したとの事でした。Raspberry PI を搭載したトラックは、クラウド上に情報を持たせる物で、完成品を MTaaS (Monster Truck As a Service)と命名しました。これは、直接トラックを操作するのではなく、iPhone の加速時計を利用し操作し、データを Amazon クラウドのデータ・サービスに保持されるという物でした。

このRaspberry PIチャレンジには、日本人技術者 (Twitter ID : @tomo_taka01 さん)も参加され、その内容がこちらのブログで公開されています。

Raspberry PI チャレンジの内容をご紹介した後、Donald Smithから3つの新しい発表を行いました。

● Raspberry PI OEM 契約の締結
オラクルは、Raspberry PI の OEM 契約の同意書にサインしました。これにより、Java SE が含まれるRaspberry PIのイメージを http://raspberrypi.org から入手可能となりました。今回の契約締結は世界中の何百万もの Raspberry PI の開発者にとってとても有益で、簡単に Raspberry PI上で Java が扱えるようになっています。

● ブラウザ上の Java バージョンのモニタリング・サービスの提供開始
この jcountdown.com で提供されるサービスは、Javaチャンピオンと、JUG リーダ、Adopt OpenJDK プログラムのジョイントプロジェクトで、ブラウザ上で利用されている Java のバージョン情報をトラッキングし最新バージョンへのアップグレードを支援するサービスです。エンドユーザがいつも常に最新の Java と、Javaテクノロジーを利用できるようにするためのサービスです。上記サイトには Java SE 7 へアップグレードするための 64 個の理由を記載したプレゼンテーション・コンテンツのリンクも記載されています。

OpenJDK コミュニティにモバイル決済企業が新しく参加
サンフランシスコに本社を構えるモバイル決済企業の Square 社が OpenJDK コミュニティに参加する事を発表しました。Square 社は、コミュニティと共に、Java 言語、JavaVMやコアライブラリの拡張に貢献する事を発表しました。低電力はとても重要ですが、特にSquare 社のCTO Bob Lee は、低電力で利用可能な暗号化技術の分野で貢献すると報告しました。

その他、OTN ラウンジで実施した Codegartenオープンソース・プロジェクトの内容も発表しました。これは既存のJava API に対して、参加したエンジニアが集まりその場で改善を施す内容です。例えば、JSR 354 の JodaタイムやMoney に対する改善、GEB を Arquillian に統合、JSON-B ライブラリのリリースの準備等をおこないました。

また、JavaOne の開催前に、JavaコミュニティによるJava コミュニティのテーマを決めるコンテストを実施しましたが、その優勝者とその内容も発表されました。コンテストの趣旨としてマニアックで面白いJava のスローガンを募集した内容で、Daniel Ellmerer さんが優勝し、JavaOne のフリー・パスをゲットしました。このコンテストは、ブラジルの SouJava, ロンドン LJC、iJUG によるオーガナイズで実施されました。

2013 Javaコミュニティのトップ5テーマ

  • Java is the Community
  • One Java to Rule Them All
  • The World runs on Java Technology
  • Java Collecting New Garbage since 1995
  • Java: from the First Cup to the Last line of Code

これらの発表後、昔のJavaOne を彷彿させる Tシャツ投げのイベントがDonald より提案され、世界中の Java のキーマンや、Java Champion, James Gosling などが会場前方に集まりTシャツ投げを実施しました。そして何と私も急遽Tシャツ投げイベントに、投げる側の人間として加わらせて頂きました。(^_^;)

次に、Donald に代わってJava Platform グループ、Product management ,Vice President の Henrik Stahl が壇上に上がり、コミュニティ・キーノートを続けました。Henrik は壇上に上がるまではスーツでしたが、「Java はビジネスの場じゃないからスーツを脱がなければね!!」と観客に伝え、壇上でTシャツ姿となりキーノートを始めました。このHenrik の立ち振る舞いに、Java開発者は彼に大喝采を浴びせました。

Java エコシステムは、様々な分野で適用できますが、Henrikは大きく 5 つのセグメント領域(教育、安全、環境、宇宙、海洋)にわけ、Javaの利用事例紹介をはじめました。


まずJava の教育について、Henrik はBeJUG, Devoxx(4kids), Parleys, playpass.be の創設者でJava Champion でもある Stephan Janssen を壇上に招きました。ここで、Stephan Janssen は Devoxx における子供用の1日セミナーの開催をビデオを使って報告しました。セミナーを開催した理由は、彼の 11 歳の子供が、「父さん僕プログラミングをやりたいんだよ」と尋ねてきたのがきっかけでした。子供の願いをかなえようと自身の母国語で書かれたプログラミング言語の書籍を探しましたが見つからなかったため、無いのであれば、自分がイベントを開催し教える事が一番良いのではないかと考えました。この子供用のイベントは当初は参加者も少なかったようですが、現在では多くの子供達が参加しています。

「世界中に存在する JUG でこのような子供向けのイベントに興味がある方はどうか、私に連絡を取って欲しい、コンテンツも、教え方も、場合によってはハードウェアも提供したいと考えています。是非、ご自身の国でもこのような子供向けのイベントを開催してください。」と語り締めくくりました。

次に、Henrik はOracle Academy Vice President, Alison Derbrenwick Millerを壇上に招きました。オラクル・アカデミーは3つの軸を柱にコンピュータ・サイエンスの教育をグローバルに展開しています。

  • オラクル・ボランティア
  • オラクル・ギビング
  • オラクル・アカデミー


オラクルは、大学生など若い学生に接触するのはとても重要な事だと考えています。一方で、オラクル・アカデミーの部門にいる社員数は世界中の子供達の数に比べ圧倒的に少ないためDevoxx 4 KIDS のように世界中の JUG の協力が必要と考えています。Java だけではありませんが、オラクルはこのような支援をしてくれるコミュニティに対して年間2700 億円の支援を行っています。このような内容に興味を持っていただく場合、Twitter,FaceBookもしくはオフィシャル・サイトにアクセスしてメールをしてくださいと語りました。

● https://twitter.com/OracleAcademy
● https://www.facebook.com/oracleacademy
● http://academy.oracle.com

次に、Henrik はJavaOne開催至上、最年少の登壇者Aditya Guptaを壇上に招き入れました。彼は、まだほんのわずか10 歳の少年で、父は Java EE のエバンジェリストとして世界的にも有名な Arun Gupta でした。Henrik は今回彼を Minecraft のハッカーとして壇上に招き入れました。

「Henrik はどんな事をしているの?」と尋ねた所、彼は冒頭、「昨年の冬、僕のゲームが壊れたんだけど、どうやったら jar ファイルを直せるの?」と父に尋ねました、なぜなら、そのゲームはJavaで作られていて jar ファイルが壊れてしまったためでした。その直し方を父に教えてもらった後、プログラミングに興味を持ち、Minecraft のコードをデコンパイルしたり、ゲームのパラメータを修正したり、ゲームの振る舞いを変更(メソッドの記載内容を修正して)するような事をしています。基調講演では実際に、Eclipse を使い 400以上の自身が書いたコードの内、ゲーム振る舞いを変更するための内容を参加者に分かりやすく紹介しました。彼の素晴らしい発表にJavaOne の参加者はスタンディング・オベーションで拍手を送りました。

その他、基調講演では様々な分野で適用される Java エコシステムについて紹介しました。

安全

環境

  • 電気消費量の減少のため、家庭の電気消費量の監視・通知システム by Opower : Drew Hylbert,(Vice President, Technology and Infrastructure)ご参照(http://opower.com/)

適用範囲・宇宙

  • NASA MMS ミッション(地上からの衛生管理システム)by AI Solutions : Sean Philips (Sr. Software Engineer)
  • ゴールドマン・サックスにおける Java コミュニティへの貢献 by Goldman Sachs : Mike Marzo (Technology Fellow)

海洋

  • Liquid Robotics の海洋センサーの制御 by Liquid Robotics : James Gosling (Chief Software Architect)

最後に、今年のJava のコミュニティ・キーノートでは、世界中のエンジニアが親として子供に母国語でプログラミング言語を教えている内容や、ほんのわずか10歳の子供が Java プログラミングを実施しゲームを改造している内容など日本の一エンジニアとしてはとても刺激を受けました。こうした子供向け、学生向けの教育は非常に重要で日本でも業界の垣根を超えて実施すべきではないかと思います。

また、Java の適用範囲は単なるエンタープライズ分野にとどまらず、ゲーム、ロボット、電気消費量計測、自動車制御などあらゆる場面で利用ができる事が紹介されました。これらの発表を受けて Java エコシステム全体像を把握でき、Java はまだまだ楽しい事がいっぱいできると感じられる内容でした。組み込み分野に精通していない開発者も、Java さえ理解していれば、Raspberry PIや Lego Mindstorms 等、組み込み・ロボット制御等で利用できるようになる他、こういったデバイスがJavaと共にインターネットに接続される、IoT (Internet of Things) 時代が到来していると感じられる基調講演でした。

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