JavaOne 2011 Day 1 テクニカル・キーノート
「JavaOne 2011 San Francisco 始まる – Java One テクニカルセッション -」
10 月 3 日 JavaOne 2011 San Francisco がついに開催されました。世界中の Java 開発者にとって1年に1度の世界最大のイベントに今年も世界中から多くの方に集まって頂きました。今年は趣向をこらし技術イベントなので技術から始めようとの趣旨の元一般の Keynote より先にテクニカル・キーノートを実施するという開発者にとって、ほんの少しだけにくい演出もありました。
今年の司会進行は、今や Java の顔といえばこの人、Adam Messinger (Vice President of Development, Oracle Fusion Middleware) が担当しました。Adam から今年の参加者は昨年に比べ増加している点や、今後開催される世界の JavaOne について、そしてもちろん来年開催する JavaOne Tokyo 2012 についても紹介しました。(Adam さんを最初に壇上に迎えるアナウンスの際、彼の事を Mark Reihhold(後述) と紹介され、僕は Mark じゃないんだけどね、なんて笑いながら軽い口調で言って会場を和ませる事ができるのも Adam さんの人柄だからできる所でした。)
今後の JavaOne の予定
● 2011 年 12 月 6-8 日 (Latin America)
● 2012 年 4 月 4-6 日 (TOKYO) ※実際は 4/4 – 4/5 の 2 日間
今年の JavaOne を迎えるに辺って改善・検討した点
● より広い空間(会場、展示空間等)
● 参加者の増加
● 拡張された技術項目
● すばらしいコミュニティとの協力
ハードウェアと共に成長・進化する Java
Adam からの紹介により Diamond スポンサーである Intel の Doug Fisher 氏よりスポンサーセッションが開始しました。 Doug Fisher 氏のセッションでは Intel における長年の Java との協力関係について、他の Intel 社員と共に Intel ハードウェア・プラットフォームに おける Java VM の最適化やミドルウェアにおける最適化についてお互いの社員が壇上に登場し発表を行いました。また Doug からは Java VM のパフォーマンスを大幅に改善するためオラクルと継続して協力し Java SE 7/8 でも Intel プラットフォームは最適な環境である事を紹介しました。
また、オラクルの Ashok Joshi (Senior Director of Development NoSQL Database) からは、新しい製品であるOracle NoSQL Database の紹介を行いました。Ashok の JavaOne での説明はとても短いものでしたが、Oracle Open World のセッションで詳細が別途報告される物と想定しております。
進化から革命へ : Java 7 から Java 8
さて、テクニカル・キーノートの最初を飾るのはやはりこの人、今 Java Platform 開発者の中で最も重要なキーパーソンの一人である Mark Reinhold (Chief Architect of the Java Platform Group) が Java SE Platform について語りました。彼はまず始めに今年 7 月 28 日にリリースされた Java SE 7 について紹介する所から始めました (Project Coin, Invokedyanmic, Fork/Join 等)。
この中で Invokedynamic の説明の箇所では元同僚でもある JRuby の開発者の一人Charles Nutter 氏を壇上に呼び、Invokedynamic により JRuby のパフォーマンスが著しく改善された点等を紹介しました。また、invokedynamic により今や Java 言語だけの実行環境ではなくなった Java VM は他の動的言語もサポートします、その中で今回Mark により JavaScript エンジンである Project Nashorn の紹介も行いました。また、来年末リリース予定である Java SE 8 についても紹介しました。Java SE 8 では Project Lambda, Project Jigsaw と呼ばれる2つのプロジェクトで実装される成果物が大きな変更点である旨紹介し、Lambda, Jigsaw それぞれについて如何に Java 言語が変わっていくかについて説明しました。Lambda, Jigsaw については別途紹介予定なため本誌では説明を割愛します。
最後に Mark から今回 Java SE 9 について初めて触れられました。
Java SE 9
● self-tuning JVM
● improved Native Integration
● Big Data
● Reification
● Tail Calls/Continuations
● Meta-Object Protocol
● Multi-Tenancy
● Resource Management
● Heterogeneous Computer model
祝 : JavaFX 2.0 正式リリース

今年の JavaOne 2011 の目玉といえばこれでしょう。JavaOne 開催初日である 10 月 3 日待望の JavaFX 2.0 が正式にリリースされました。JavaFX の説明では JavaFX のチーフ・アーキテクトである Richard Bair (Client Java Platform, Oracle) が担当し発表を行いました。彼は JavaFX はクロス・プラットフォームにおける相互運用性が実現できる事、開発生産性が高い事が重要である事を延べ、それを実現する為のツールとして下記の4製品のリリースを発表しました。
● JavaFX 2.0 の正式リリース
● JavaFX 2.0 Developer Preview for Mac OSX
● JavaFX Scene Builder Early Access
● NetBeans 7.1 Beta (JavaFX 2.0 対応)
JavaFX 2.0 のデモでは 2D/3D のグラフィックを使用したアニメーションの動作や
非常にリッチな表現が可能なテーブル(表)等のデモを行った他、JavaFX ラボから
来た方は JavaFX 2.0 を使用して 3D で書かれた Duke をモーションキャプチャして
操るデモを行い多いに会場の注目を浴びていました。JavaFX の表現力はとても豊か
なため是非ご使用ください。
クラウドへ移行する Java EE
JavaFX のデモに続いて Java EE のスペックリードである Linda Demichiel から Java EE 7 について説明し、今後 Java EE が PaaS 環境へ対応する事を述べました。さらにパブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドを実現したいユーザや顧客に対してそれを実現する方法を提供したいと述べました。
具体的に クラウド環境へ適用する為に、新たに JAX-RS クライアントAPI, キャッシュ API, 状態管理 API, JSON API 等を追加予定である事を発表しました、また API の追加に加え既存 API をマルチテナンシー対応にするため拡張する事も説明しました。また Linda の同僚である Arun Gupta より Java EE の参照実装である GlassFish を使用してサーバの使用状況に応じて動的にインスタンスを増やすデモの実演等も行われました。
Arun が実施したデモは http://glassfish.java.net/javaone2011/ のサイトから入手する事も可能です。
Java Mobile&Embeddedハイライト

時間がおして始まったJava Mobile & Embeddedパートは、スペックリードのHinkmondが、2011年に達成したJavaCard、Java Mobile、Java Embeddedに関するアップデートを駆け足で紹介してくれました。JavaCardからはNFCやM2Mへの対応、Java MobileではWeb Integrationや新しいクールなUI、Java Embeddedではエンタープライズとの統合(おそらくBDBやMobile Serverとの連携)や、Java TVでの新しいメディアストリームアプリケーションの紹介がありました。ちなみに、JavaCardはこれまで65億枚の出荷実績を持ち、Java Mobile(携帯電話)は30億台、Java TV(テレビ)は1.25億台の実績のあるテクノロジーです。また、7月のJava SE 7のGAと同時にJava SE 7 for Embeddedをリリースした事も重要なアップデートとして触れられました。2011には他には次のようなアップデートがありました。
Oracle Java Wireless Client 3.0
JSR 229 1.1: Payment API
LWUIT 1.5
JSR 253: Mobile Telephony API
Java ME SDK 3.0.5
JSR 172 1.1: J2ME Web Service API
Oracle Java Embedded Client 1.x
Java SE Embedded 7
Java Card Development Kit 3.0.4
Oracle Java Wireless Client 3.1
Oracle Java Services Bridge Beta
デモでは、Java MobileのNetwork APIが紹介されました。Network APIはキャリアがネットワーク機能を開発者へ利用可能にするものです。実際に、最近クーポンサービスなどで流行っている位置情報を使ったジオフェンス(仮想的な地理的境界)を利用し、AdamがOakland駅に到着したと同時に携帯電話に、SMSで周辺情報がプッシュされるデモが実演されました。
もう一つはTVのデモで、PS3のJavaアプリケーションからDLNA対応のプリンタやスマートフォンへネットワーク連携するアプリケーションでした。RIOのBlu-rayのポストカード作成アプリケーションを使い、再生しているBlu-rayムービーから好みのシーンをキャプチャして、そこに好きなメッセージや画像を入れて加工し、DLNA経由でポストカードをプリンタへ送り印刷して見せました。また、出力先を変えてスマートフォン(Androidアイコンが!?)に送信して同じ画像を再生して見せてくれました。
時間オーバーして始まったため、Hinkmondのセッションは10分しか無くちょっと残念でした。しかし、デモグラウンドでは約1/3のブースがJavaCard, Java Mobile, Java Embedded関連で、スマートメータやヘルスケアモニタなど新しいJava搭載デバイスのデモもたくさん紹介されていました。また、2日目のStrategy Keynoteの方で、Java SEとJava ME CDCが統合し組込み向けにCDC Profileの予定や、CDCのGUIにJavaFXが予定されているなど、大きなロードマップがアナウンスされています。
まとめ、
今年のテクニカル・キーノートで新しい情報が取り上げられたのは、まさに新製品をリリースしたばかりの JavaFX 2.0 です、続いて Java EE 7, Java SE 7/8 と続く形になります。個人的に感じた事は Java SE に関しては、新しい情報は殆どなく以前何れかの場所で説明された内容、もしくはそれに近い内容が多い印象でした、唯一 Java SE 9 のコンセプトは例外で今回初めて出て来た情報ではないかと思います。また注目度は、セッション数にも比例している所があり、今年の JavaOne は特に JavaFX のセッション数が非常に多い事からも Oracle が本気で JavaFX に対して取り組みを始めた事を現している事になります。続いて多かったのが Java EE 7 に関連のセッションです。クラウドというキーワードを元に PaaS 環境で利用可能になる今後の Java EE 7 にも是非ご注目ください。
最後に、
本日発表された製品に関する情報は下記より入手可能です。
http://blogs.oracle.com/otn/entry/the_most_exciting_oracle_openworld
また、今回のキーノートで JavaFX にご興味を持たれた方は、是非 JavaFX のセッションへ足をお運びいただくか日本の開発者の皆様も是非、新しくなった JavaFX 2.0 の情報を色々と入手して頂き、是非お試しください。
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